欠陥住宅から学ぶ(ある事例より)−(1)
1.パチンコ玉
ここで、
実に目も当てられないくらいの、
ひどい悲劇物語をご披露します。
話が少し長くなるかもしれませんのでそのつもりでいてください。
真夏のことでした。
私の知り合いの設計事務所の所長から、
応援依頼の話が飛び込んできました。
その設計事務所はある弁護士からの依頼で、
紛争中の建物の調査をしていました。
調査が進むにつれて、
建物のこの部分は、
本来どうあるべきなのか等の判断に苦しみ、
私に応援を求めてきた訳です。
私は、
早速その所長の案内で現場に赴きました。
木造の平屋建てで瓦葺の家でした。
あらかじめ手渡された資料に目を通していましたから、
ことの重大さは直感で分かりました。
玄関からダイニングテーブルの椅子に案内されて、
施主の奥様を紹介されました。
まもなく先の弁護士先生も到着して、
この件のあらましが語られ始めました。
その時の奥様の様子は未だに忘れられません。
かれこれ20代後半と思われる息子さんを傍らにして、
目に一杯涙して、
感情を押し殺しながら語る様子は、
目にもかわいそうで、
その場にいることの辛さを感じました。
一通り話をお聞きした後、
私は思うことがあって、
その息子さんにパチンコ玉とか、
何かボールみたいなものはありませんかと尋ねたら、
その息子さんの目が一瞬光り、
ニコッとしてポケットからパチンコ玉を出しました。
彼の手のひらには3個のパチンコ玉が見えました。
恐らくこの息子さんは、
これから私のやろうとすることを、
もう既に自ら経験していたと思われます。
息子さんは、
我が意を得たりの心境だったに違いありません。
私は、
その3個のパチンコ玉を息子さんから受け取りました。
パチンコは若いころは時々していましたが、
今はここ十数年したことがありませんので、
手にしたパチンコ玉の重さを久々に味わいました。
こんな話はどうでもいいことですね。
私は、
3個のパチンコ玉を、
ダイニングキッチンの床にそっと置きました。 つづく

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